年金基金などが、顧客や加入者の利益を守るために負う法的な責任のことです。年金資産を自分の財産のように扱うのではなく、あくまで加入者・受給者のために管理・運用するという、非常に重い責任を指します。この責任の核心は、次に説明する「注意義務」と「忠実義務」という2つの義務から成り立っています。なぜこの責任が重要かというと、年金は個人の老後の生活を支える大切な資金であり、その運用には極めて高い倫理観と専門性が求められるためです。
受託者責任を構成する2つの具体的な義務です。「注意義務」とは、資産運用の専門家として、当然払うべき注意を払って業務を行う義務を指します。これには、投資理論などの専門知識に基づき、合理的な判断を下すことが含まれます。一方、「忠実義務」とは、自分や第三者の利益を一切考えず、ただひたすらに受益者(年金加入者・受給者)の利益のためだけに行動する義務です。特に、利益が相反するような取引(利益相反行為)を厳しく禁じている点が特徴です。この2つの義務があることで、年金資産が安全かつ適切に運用されることが担保されています。
年金基金が、受託者責任を果たすために策定する、資産運用に関する最も基本的なルールブックです。これには、運用の目標(目標利回り)、資産構成(ポートフォリオ)、運用を委託する会社の選び方や評価方法などが定められています。なぜこれが必要かというと、場当たり的な投資判断を避け、長期的かつ安定的な視点で一貫した運用を行うためです。不動産のような新しい資産クラスに投資する場合も、まずはこの「運用の基本方針」上でその位置づけを明確にすることが求められます。
かつて日本の企業年金に課せられていた、資産構成に関する厳しい規制のことです。具体的には、資産全体のうち「安全性資産5割以上、株式3割以下、外国証券3割以下、不動産2割以下」という上限が定められていました。この規制の背景には、年金資産の安全性を最優先する考え方がありました。しかし、この規制はすでに撤廃されています。撤廃されたことで、各年金基金は自己責任のもとで、より柔軟かつ高度な資産配分戦略(例えば、不動産への投資比率を高めるなど)を採ることが可能になり、不動産証券化市場の発展にもつながりました。